奥野一香の生い立ち
名人駒の作者として有名な駒師で
大正・昭和のはじめ豊島龍山と駒業
界の双璧であった奥野一香とは、奥
野藤五郎と、その次男の幸次郎の二
人のことをいいます。
初代奥野一香の藤五郎は、慶応二
年に生まれ、大正十年に五十四歳で
亡くなっておりますが、もともとは
将棋指しで、将棋同盟社の設立に二
段として参加し、その後、将棋大成
会に所属し四段で引退をしました。
同じ時代に豊島太郎吉も将棋大成会
に所属していましたので将棋を咲い
たこともあるでしょう。藤五郎は棋
士としては大成できませんでしたが、
生活のためしていた駒作りが、彼を
有名にします。しかしながら将棋指
しであった藤五郎自身が、年を取っ
てから駒を作れるわけもなく、十月
号の大竹竹風師の巻で紹介した松尾
某氏なる人物に駒の製作を依頼し、
その駒に自分で銘を入れて販売して
いたようです。