二代目奥野一香について
二代目の幸次郎の駒は、彫りが滑
らかで、松雄氏のものとは大分印象
が違います。きれいな彫りといった
感じがします。盛り上げは、松雄氏
に近く、その製作方法を世襲してい
るようです。残念ながら幸次郎も豊
島数次郎と同じく三十台の若さで昭
和十三年に亡くなってしまいました。
二人が、五十、六十の年まで生き
て駒を作っていたら、どんな「枯れ
た駒」を作っていたのかを考えると
大変に残念です。
今回、駒の書体名と作者名の写真
を掲載しましたが、大変に流麗で美
しいものです。天童の故伊藤久徳師
のお宅に奥野一香の「作者名」と「書
体名」の資料が残っておりますが、
それらの「名」をゴム印で作ったも
のです。漆をガラス板の上に薄くの
ばし、それにゴム印を乗せ、駒尻に
転写します。その後筆で漆溜りを置
くと奥野一香の名ができます。初代
自身が駒を作る技量が無かったため
のものと思われます。邪道といって
しまえばそれまでですが、見事な名
入れです。また、いまだにそのゴム
印使うことができたことにも驚かさ
れました。